焙煎豆販売

焙煎したコーヒー豆の販売について


コーヒーを趣味にしていると、ときどき話題にあがるのが、昨年6月*1 以降は焙煎した豆を販売するときに許可が必要になるというもの。

ということで、平成30年6月の食品衛生法改正にともなう、コーヒー豆販売の届出について調べてみました。
手続き自体は、令和3年11月30日までに行えばよいようです。

結論から言うと、管轄の保健所へ相談すれば確実です!

とはいえ、調べた時間がもったいないので、その内容を書いておきます。

まず、前提となる法令から。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kigu/index_00010.html

厚労省の案内からすると、業態によって営業許可・営業届出の、2種類が存在するようです。

以下、市区町村ごとの都合があり、僕の住む埼玉県川口市での例になります。

https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01090/027/shokuhin/eigyoukyokaseido/32663.html
営業許可・届出の対象となる全ての施設は、HACCPに沿った衛生管理の実施に加え食品衛生責任者を設置する必要があります。
ということで、営業許可・届出の対象がどういうものなのか、その確認からしていきます。

*1 : 記載時点の今年は 2022 年です。

届出制度

まず、食品衛生法改正による届け出制度について、次の通り広報がありました。
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01090/027/shokuhin/eigyoutodokedeseido/32785.html

法に基づく新しい届出対象業種一覧

コーヒー豆販売が含まれるかどうかは、"<新たに定められる届出業種の例>" に例示がありました。
現在の業種又は職種新法における業種
その他の製造業(コーヒー豆の焙煎や豆挽き行為等)コーヒー製造業
つまり、副業であっても焙煎したコーヒー豆販売を行おうという場合、コーヒー製造業に従事することになるようです。
この場合、令和3年11月30日まで*2 に届け出が必要とのこと。

また、廃業や変更が生じた場合にも届出が必要と。

ここで重要なのは、届出の必要な業種に含まれることであって、申請の必要な許可業種には含まれないことです。
届出と申請(許可業種)の区分が変わると、必要な準備が増減します。
川口市
もう少し詳細な一覧がありました。

https://www.city.kawaguchi.lg.jp/material/files/group/232/todokedegyousyunosettei.pdf
食品衛生法等の一部を改正(中略)により営業届出制度が創設され、営業(中略)を営もうとする者は、営業所の名称、所在地及び営業の種類等を都道府県知事等に届け出ることとなりました。
ということで、食品等事業者としての分類は次の通り。

https://www.city.kawaguchi.lg.jp/material/files/group/232/todokedegyousyuichiran.pdf
区分現在の業種又は職種新法における業種
製造・加工業16. コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く。)
各業種の範囲は、次の通り。
番号業種各業種の範囲業種の説明備考
9通信販売・訪問販売による販売業無店舗小売業(飲食料小売)【6113】無店舗により、飲食料品を小売する営業をいう。ただし、店舗によるものは「その他の食料・飲料販売業」に分類される。焙煎した豆の販売だけなら該当しない模様
13その他の食料・飲料販売業茶類小売業【5894】主として茶(緑茶、紅茶等)及び類似品(ココア、コーヒー等)を小売する営業をいう。焙煎した豆の販売だけなら該当しない模様
16コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く。)コーヒー製造業(清涼飲料を除く。)【1032】主としてコーヒー生豆を焙煎、粉砕して荒びきコーヒー又はインスタントコーヒーを製造又は加工する営業をいう。コーヒー生豆の焙煎が明記されているので該当
1業種1許可の原則 *3 ができたようで、迷ったら 16 番を選択すれば問題なさそうです。

*2 : 経過措置期間を含む。

*3 : ケーキを作る飲食店は、製造業と飲食業の両方の許可が必要だったが、製造業だけで飲食店もできるようになったとのこと。

届出

都道府県知事等に届け出ると記載があるものの、手続き自体は保健所窓口で行うようです。

HACCP(ハサップ) に沿った衛生管理の実施

全ての食品等事業者は HACCP に沿った衛生管理の実施が制度化されています。

埼玉県の HACCP に沿った衛生管理
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0708/haccp/haccp-top.html

営業の種類や事業の規模に応じて、次のどちらかの衛生管理を行う必要があるとのこと。
  • HACCP に基づく衛生管理
  • HACCP の考え方を取り入れた衛生管理
「HACCP って何?」という僕みたいな人は、厚労省のページを読めば良さそうです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html

焙煎したコーヒー豆の販売なら小規模な営業でしょうから、HACCP の考え方を取り入れた衛生管理になると思います。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は、こちらなのですが……
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00007.html

業界団体が作成して厚労省が追認した手引書を読めよと。
うーん……
コーヒー製造における HACCP の考え方を取り入れた衛生管理のための手引書
コーヒー製造業の場合って、どれ?
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00003.html

あ。
「一般社団法人全日本コーヒー協会」と「全日本コーヒー商工組合連合会」が、連名で発行してますね。
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000609567.pdf

必要なのは、事業者自らが「一般衛生管理」と「HACCP に沿った衛生管理」の双方の「衛生管理計画」を策定する必要があると。
あと、実施の記録および保存。

意訳すれば、次のような感じ。
  • 農薬とかカビには注意しつつ、購入先はきちんと記録しておこう。
  • 生豆の近くに殺虫剤やら洗剤やらの化学物質は近づけないでね。
  • 異物混入しないように清掃・点検の実施と記録もやってね。
  • とにかく清潔に。整理・整頓・清掃・消毒・防虫・防鼠(ぼうそ) は徹底しよう!
  • 想定される問題が発生した時のマニュアルも作っておこう。
  • 関係者以外はシャットアウトしよ?
  • 消費者に健康被害がでたかもって思ったら保健所に連絡してね。
衛生管理計画や記録法法については、最後のページに例文があるので丸パクリすればよさげ。
迷ったら
まぁ、迷ったら保健所に相談すれば良さそうです。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/hokenjo/hokenjo-itiran.html

川口市なら、川口市保健所でした。
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01090/018/19085.html

実際問題、家庭のコンロで営業しようと思ったら、保健所の意向次第なところはありそうです。
どこまで清潔を保てますか、と。
それを担保するのが食品衛生責任者のようにも思いますが、担当者次第……。

食品衛生責任者の設置

食品衛生責任者とは、「衛生管理を行い、安全な食品をお客様へ提供するための知識を持った人」になります。
冒頭に記載したとおり、許可が必要な施設だけでなく、届出の対象となる施設も設置しなければなりません。
食品衛生責任者の資格要件
食品衛生責任者の資格を取るには、次のどれかが必要です。
  • 食品衛生監視員又は食品衛生管理者
  • 調理師、製菓衛生士、栄養士、船舶料理士、と畜場法に規定する衛生管理責任者・作業衛生責任者、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律に規定する食鳥処理衛生管理者
  • 都道県知事等が行う講習会又は、都道府県知事等が適正と認める講習会(食品衛生協会が実施する講習会)を受講した方
特に免許を持たない場合、3点目の講習会を受講する必要がありそうです。
食品衛生責任者実務講習
川口市の食品衛生実務講習会
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01090/027/shokuhin/oshirasetop/keihatsu/30232.html
受講すると「実務講習会修了証」が発行されます。

料金

申請手数料

申請手数料は不要のはずです。

食品衛生法に基づく許可業種と申請手数料の一覧
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01090/027/shokuhin/jigyousha/shinkieigyou/30247.html

上記には記載がないようなので、新規手数料・更新手数料といった、申請手数料は発生しないと思います。
が、届出制度自体が新設なので、まだ手数料を掲載していない可能性もあります。念のため保健所にて確認してください。

受講料

食品衛生責任者養成講習会は 10,000 円(消費税含む) の受講料が必要です。
http://www.s-shokyo.jp/publics/index/41

これは川口市の場合なので、具体的な金額は講習会の申し込み時点で確認してください。
講習会場での受講
講習会当日、受付時に現金でお納めます。

講習の全課程を受講したその場で、資格者証が交付されます。
eラーニング講習会での受講
eラーニング講習会の場合の受講料は、クレジットカードやコンビニ決済になります。

入金確認後にテキストが送付され、受講が終了したら修了証が送られます。

食品表示

知り合いなどに細々と売っているなら問題にならないのですが、販売するコーヒー豆をネットで売ろうと思ったら、食品表示法のきまりで原材料や賞味期限などの食品表示を商品に記載しないといけません。

表示例

最低限
レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和 37 年
法律第 134 号)第 31 条第1項の規定に基づく、コーヒーの取引について行う表示に関する事項
が定められています。

焙煎した豆を販売する場合は、最低限、以下の様式を満たす必要があります。
項目表示例備考
品名レギュラーコーヒー
原材料名コーヒー豆(生豆生産国名)
内容量200g
賞味期限23.1.1開封前の状態で保存した場合を想定
保存方法直射日光および高温多湿を避ける。
使用上の注意開封後はできるだけ早く使用し、濡れたスプーン等は使用しないこと。また、火傷に注意すること。
挽き方粗挽き豆のままの場合は記載なし
原産国名ブラジル
事業者焙煎 豆太郎食品関連事業者*4 の氏名又は名称
埼玉県川口市珈琲1-2-3食品関連事業者の住所又は所在地
製造所埼玉県川口市珈琲1-2-3製造所又は加工所の所在地*5 及び製造者又は加工者の氏名又は名称*6
栄養成分の量及び熱量*70 cal
あるとうれしい内容を含める
焙煎豆については、賞味期限より焙煎日の記入があったほうが、消費者としてはうれしい。
もちろん賞味期限の記載は法律に基づく事項なので、追加で。

*4 : 食品表示法第2条第3項第1号の食品関連事業者をいう。

*5 : 輸入品にあっては、輸入業者の営業所の所在地

*6 : 輸入品にあっては、輸入業者の氏名又は名称

*7 : コーヒーについては、栄養の供給源としての寄与の程度が小さいため、省略可能

まとめ

焙煎したコーヒー豆を販売する人は、届出の必要なコーヒー製造業に従事するとみなされます、と。
コーヒー製造業を営むには届出が必要で、その届出を受理してもらうには「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」の実践と、適切な講習会を受講すればよさそうです。

衛生管理については、管轄の保健所に相談してください(としか言えませんね)。


みなさま、法を順守しつつ楽しい焙煎ライフを!